櫻本 真理氏〈株式会社cotree〉
第三回は株式会社cotreeの櫻本真理氏を取り上げる。
「アメリカは床屋よりカウンセリングルームが多い」
そう言われるのをご存知だろうか。
日本でのカウンセリングは「心が病んでいる人が受けるもの」という認識が強く、うつ病や不安障害など、明らかに不調をきたして初めて利用するイメージが根強くある。
なので、今でこそそうでもないだろうが、映画やドラマで主人公がカウンセラーと笑い話をするシーンや、セラピーを受けた後ランチに出かけるシーンなどを目にすると、違和感を覚えたことのある日本人は少なくはないだろう。
アメリカではカウンセリングへの敷居が低く、重い症状の患者のみならず「心の調子を整える」感覚で気軽にカウンセリングを受ける人が多い。
そうは言ってもお国柄や民族性は一朝一夕に変えられるものではない。
過度なビジネスストレスに曝されながら、カウンセリングルームのドアを開けるのは気が引ける、そんないかにも日本人らしい問題に商機を見出したのが櫻本真理氏である。
氏は、「オンライン」のカウンセリングに目をつけた。
オンラインであれば、クライエントはいつでもどこでもカウンセリングを受けられる。
もちろんフィジカルを介さないサービスゆえ、メリットばかりとは言い難い。
しかし例えば「面接直前、緊張して逃げ出したい」なんてピンポイントなカウンセリングのニーズがあるとしよう。
そんな時、オンラインであればすぐにカウンセラーにつなぐことが可能だし、それによって誰かは面接をすっぽかすことなく、安心して面接に挑めるかもしれない。
「心理相談は向き合って行うもの」という古き良き王道を否定する気はさらさらないが、時代に合わせて進化することだって、決して悪いことではない。
どちらも一長一短、消費者の選択肢が増えることはメリットだし、サービスの進化ではないだろうか。
カウンセリングサービスに注目し、起業したのは日本におけるメンタルヘルスケアの問題に関心があったからだ。
氏自身、睡眠障害に悩まされた際、カウンセラーという存在が気軽に相談できる場所にいないなと感じたこともあって、このサービスを開発するに至ったと語っている。
こういった「思いやり」の風味がしっかりと感じられるビジネスを目にすると、女性らしさや女性ならではの着眼点は、社会を癒す大きな力ではないかと感じてやまない。
一億総社会人のような現代、今後も誰かの「喜び」や「安心」に目を向けたサービスが登場することを願っている。